「不老」長寿ならぬ「不良」長寿のすすめです。著者は順天堂大学医学部教授で、免疫細胞であるサプレッサーT細胞の発見者にして、日本免疫学会会長なども務められた免疫学の第一人者です。
本の帯には「不良長寿への3本柱は、笑い!ストレス発散!動く!」とあり、続けて「いきいき長く生きる秘訣とは?生まれつき私たちの身体に備わっている、免疫力をきたえることです。どんなに強力なウィルスや病原菌に感染しても、免疫系さえしっかりしていれば発症しません。生命力とは免疫力だと、私は思っています。中でもガン細胞やウィルスをいち早く見つけて殺してくれる、NK(ナチュラルキラー)細胞は重要です。では、どうしたらそのNK細胞を元気に保てるのでしょうか?まじめをやめ、明るくマイペースな、少々不良になることです。(本文より)」とあります。
その他、目次の項目をひろってみると「まじめな人ほど早死にする理由」「禁煙しても肺ガンは増える」「「不良長寿」への7つの習慣」「コレステロール値は300まで放っておけ」「降圧剤など愚の骨頂」「年をとったら太めが長生き」などなど、一見トンデモ本のようでもありますが、内容は説得力のあるものとなっています。
(著者:奥村 康、宝島新書、2009年1月 発行)
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本書でも触れられている「フィンランド症候群」~フィンランドで行われた15年間の調査で「医者の健康管理と栄養指導に従ったまじめグループよりも、健康診断さえ受けない不良グループの方が病気にかかりにくく、長生きし、自殺も少なかった」~などをみても、現代医学の「常識」とされていることを無条件に信じない方が身のためだと思います。特に、「西洋以上に西洋医学一辺倒」の日本の医療と「まじめ」な日本人の組み合わせは、医療現場の片隅でみていても「?」なことがいっぱいあります。
さて、著者のいう「まじめ」な方はストレスを受けやすく、交感神経優位の状態が続くことから免疫力が低下しやすいというのは、漢方的にみると、「気」の流れの停滞=「気滞」となります。
「気」とは、人間の持つ生理的な機能を指し、免疫力もその一つで、「気」の流れが停滞すると免疫力の低下だけでなく、胸や脇が張るとか、ゲップやガス、便通の異常などの症状も出やすくなります(ガンでは女性の乳ガンは「気滞」の影響が強いと言われています)。このため、普段から「気」の流れをスムーズにしておくことが重要になり、本書にも書かれているようなストレスを溜めない工夫のほか、太極拳や気功などの“運動療法”や、疏肝理気薬と呼ばれるカテゴリーの漢方薬を服用することなどが必要とされています。
また、免疫力を維持するためには、「気」の流れを滞らないようにすることの他にもうひとつ重要なことがあり、それは「気」のエネルギーそのものが低下しないようにすることです。「気」のエネルギーの低下要因としては老化と「脾気」と呼ばれる胃腸機能の低下の二つが問題になります。
よって、漢方的な見地からは、免疫力を維持するためには、まじめかどうかは別にして、「気」のエネルギーの低下を防ぐことと、流れをスムーズに保つことが重要になり、免疫力がかかわる疾患に対しては、この2点を中心に改善をはかるという方向性になります。