日本最古の医学書である「大同類聚方」や「医心方」を現代語訳されたことで知られる著者が、現代でも日本人にとって身近な鶏や菊、柿、五穀などの薬効についてわかりやすく解説しているエッセイ集です。
副題に「古医学の知恵に学ぶ」とあるように、柿も果物といえば果物ですが、ヘタを煎じるとしゃっくりの薬になりますし、干し柿の表面のしろい粉はのどの乾燥などを鎮める作用があり、薬としても用いられてきたことや、「五穀」の「五」という字は上の横線が「天」をあらわし、下の横線が「地」、その間に天と地の気が交わるという意味の「X」と書いたのがもともとの字であり、「五穀」とは天地の気の交わりにより生じる穀物の総称であるといったことが書かれてあります。
(著者:槇 佐知子、(株)筑摩書房発行(ちくま文庫)、2000年2月)
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化学的に合成された医薬品が当たり前の今日では、何もかもが科学的に説明できると思っている方が多いのですが、科学は実験などにより証明された事「だけ」を言うので、そのこと自体は間違ってないのですが、前提条件が変わったり、他の要因が絡んできた時には話が違ってきます。
薬や食べ物の難しいところは、実験室や動物実験では再現できないほど人間の体が複雑で、科学的には未知の事が多すぎて、前提条件や他の要因の影響が大きいということです。
ですから、どんなに優れた新薬でも、発売されて数年もすると副作用などが次々に出てきて市場から姿を消すか、添付文章の注意書きがどんどん増えていきます。
これに対して古医学とは、何千年、何万年もの昔から人体実験をくり返してきた結果としての医学であり、食べ物であるということだと再認識させられました。