こころの免疫学

Photo  著者の寄生虫学や感染免疫学がご専門の東京医科歯科大学名誉教授にして人間総合科学大学教授の藤田博士は、これまでにも日本で増え続けているアレルギー疾患の原因として腸内の寄生虫がいなくなったことが原因であるという説を唱えておられましたが、本書は“「こころの病」は、脳だけでなく、食べ物や腸内細菌までも含めた、からだ全体の問題だった。神経系、内分泌系、免疫系が密接に影響しあう驚きのメカニズム、セロトニンなど神経伝達物質生成における腸内細菌の重要な役割、そして、増加し続ける精神疾患に対する抜本的な意識改革の必要性・・・「こころの免疫力」をつけるための革命的パラダイム。(本書の裏表紙より)”として、アレルギー疾患のみならず、心の病の増加も腸内細菌バランスを崩してしまったことが背景にあることがわかりやすくまとめられています。

(「こころの免疫学」 藤田紘一郎 著、新潮選書、2011年8月初版)

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 近年、腸内細菌バランスとアレルギー疾患に関しては研究が進んでいますが、本書では、セロトニンやメラトニン、ドーパミンといった物質の前駆物質は腸内細菌の働きでつくられること、またこれらの前駆物質の合成にはやはり腸内細菌がつくる葉酸やビタミンBなどが必要であり、腸内細菌に問題があると、脳内のセロトニンなどが減少してうつなどを発症すると指摘されています。

 また、多くの日本人の腸内細菌バランスが悪化した原因として、食物繊維の減少をはじめ食べ物の問題が大きいとし、日本と違って食物繊維の摂取量が非常に多いメキシコでは自殺する人が非常に少ないことなども例としてあげられています。

 これまでにも食べ物とうつの関連では、食品中のミネラル不足と食品添加物によるミネラルの吸収阻害が関わっているとの指摘も紹介してきましたが、ミネラル不足の加工食品などを常食していると、それらに含まれる化学物質が腸内細菌に悪影響を与えるのは間違いないですし、腸内細菌バランスの悪化はミネラルの吸収にも悪影響を及ぼします。

 本書で触れられているような西洋医学でいう脳腸相関に関する研究から、うつやアレルギーに限らず、人間が健康に生きていくためには腸内細菌バランスを良い状態に保つことがポイントになりますが、その為には食べ物や食べ方といったものが最も重要だということです。

 

 

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