コラーゲンは効く?
コラーゲンといえば、十数年前に日本でも美容目的に大ブームがおきたことがあります。因みに、コラーゲンは3本のポリペプチド鎖がらせん状にからまった構造をしており、そのままでは殆ど吸収されませんが、水とともに加熱することで水溶性のゼラチンが生じます。更にゼラチンを酵素処理することで低分子のコラーゲンペプチドになります。巷で“コラーゲン”として売られているものは、動物の皮や骨から得られたコラーゲンをゼラチンやコラーゲンペプチドにまで分解したものです。
当時、ヒト試験でコラーゲン(コラーゲンペプチド)を摂取することで、実際に被験者の上皮水分量やお肌の柔軟性が改善することなども報告はされていましたが、コラーゲン製品(コラーゲンペプチド)を摂取しても、体内でアミノ酸に分解されて吸収されるだけで人体のコラーゲンが増えるわけではないとする意見がありました。その後、コラーゲンペプチドを経口摂取することで、摂取したコラーゲンがそのまま人体のコラーゲンにならないにしても、末梢血中にコラーゲン由来のペプチドが高濃度に移行し、コラーゲンやヒアルロン酸を作り出す線維芽細胞を増殖させることが明らかとなり、結果的に人体のコラーゲンが増えることが確認され、近年、コラーゲン製品の需要は大きく伸びています。
コラーゲンは、人体を構成するタンパク質の約3分の1を占めており、特に皮膚や骨、軟骨など結合組織の主要な構成成分です。また、老化とともに減少することで、お肌の張りが失われたり、骨などももろくなって足腰が痛くなることなどから、漢方的には“腎精”の一部ともとらえられます。
動物の皮や骨から得られたコラーゲンペプチドを摂取することで、体内のコラーゲンが増えて、お肌や骨が健康になるというのは、薬膳的に考えると、体の悪いところを治すのに他の生物の同じ部位を摂る“同物同治”という考え方そのものです。
究極のコラーゲン
明の時代の『医方考』を出典とする亀鹿二仙膠は、亀板と鹿角、枸杞子、人参からなる処方ですが、処方名に膠とあるように、亀板と鹿角に水を加えて10日ほどかけて弱火で煮詰めていき、亀板と鹿角に含まれる膠質(コラーゲン)が溶け出したところへ枸杞子と人参を加えて更に煮詰めてつくられます。煮詰めることで亀板や鹿角が持つ補益作用が強くなるとされ、古来、不妊や老化予防、足腰の痛みなどに用いられてきました。生薬の世界でコラーゲンといえば、ロバや牛の皮を煮詰めて得られる阿膠が有名ですが、阿膠は補血作用や美容効果に優れているものの、腎精を補う作用に於いては亀板膠や鹿角膠の方が優れています。
亀板は亀の腹甲ですが、中国の南北朝時代の作と伝わる『述異記』には“亀は千年で毛が生え、五千年で神亀となり、一万年で霊亀とよばれる”とあり、中国では神聖な生き物とされています(霊亀は、鳳凰、麒麟、応竜とともに瑞兆をあらわす四霊のひとつとして挙げられています)。また、鹿角は鹿の角ですが、同じく『述異記』に“鹿は千年で蒼鹿になり更に五百年で白鹿となり、もう五百年生きると玄鹿となる”とあるように、亀と同様、生命力が強い動物として認識されてきました。また、鹿の角は毎年生えかわることから、古来、復活と再生のシンボルとして認識されてきました。
亀板と鹿角はともに、腎精を補う作用があるとされていますが、大地(=陰)に接し、亀の“陰”の部位である腹甲は、精の陰の部分(陰精)を補うと考えられ、陽気が高まる季節に“陽”の部位である頭の上に天に向かって生えてくる鹿角は精の陽の部分(陽精)を補うとされ、この二つの生薬の組み合わせは生命の根源である“腎”の陰陽をバランス良く補う組み合わせとなっています。亀板と鹿角から得られたコラーゲンペプチドを主成分とする亀鹿二仙膠は、生命の根源物質(“腎精”)を補う究極の“コラーゲン”といえます。