わかりやすい漢方講座(36)~冬でも裸足は元気な証拠?
漢方では、人間の健康とは、大きくは「陰と陽の調和」であると捉えます。また、老化というのは避けられないものの、陰と陽が調和した状態を保つことが老化を遅らせる為には大事であると考えます。
ところが、人間の老化過程では陰と陽が調和を乱しやすく、陰陽の調和が乱れる事で、老化の進行が早まります。老化というのは避けられないものの、陰と陽が調和を保ちながら減少していくというのが健康的な老化とすると、陰と陽のどちらかがもう一方よりも先に減少することで、結果的に陰も陽も人より早く減少していく、即ち老化が進んでしまいます。
陰と陽を簡単に、水と火に例えれば、水が先になくなるか、火が先になくなるかという事ですが、このうち火が先になくなるケース(「陽虚(ようきょ)」といいます)では「冷え症」という症状が出てきます。こういう場合は、本人も用心するものですが、問題は水の方が先になくなるタイプです。
漢方では「陰虚(いんきょ)」と言いますが、このケースでは、手のひらや足の裏などがほてりやすく、冬でも靴下をはくよりも裸足の方が気持ち良いとか、ふとんをかぶって寝ていても足の先(足の裏)だけふとんの外に出してしまうという方です。これは、一見、元気そうに見えますが、漢方的には冷え症の人と同じように、老化が進みやすい状況にあるととらえます。
陰虚タイプの方は、確かに冷えには強いかも知れませんが、反面、寝付きが悪い、膝や腰が痛む、口が渇きやすい、夜間に尿量が多くなる、動悸がする、目がかすむ、皮膚が乾燥しやすいなどの症状が出てきやすくなるなど老化現象が進みやすくなります(因みに、このまま老化が進んでいくと、暑がりの寒がりというか、ちょっとした環境変化にも対応しにくいような状態になっていきます?「陰陽両虚(いんようりょうきょ)」といいます)。
また、水が足りないのなら水を飲めばいいのではないかと思われる方も居られますが、体を構成している水分は、水を飲んでも増えません。漢方では、陰虚タイプの方には、補陰作用と言って体を構成する陰分を増やす作用のある処方で陰と陽の調和を計るようにします。
中年以降の方で、冬場でも靴下なしでも平気で、自分では元気だと思っていても、最近疲れやすくなったとか腰や膝が重だるいというような自覚症状のある方は、漢方薬の服用をお勧めします(西洋医学的には、陰虚の症状を改善するという薬効のあるものは殆ど存在しません)。