春は「肝」の季節

わかりやすい漢方講座(34)~春は「肝」の季節

 今年は、冬らしい冬のないまま、旧正月(2月18日)を迎え、暦の上では「春」の季節がやってきました。

 さて、漢方の世界というより陰陽五行説という中国哲学の根幹をなす考え方では、「春」は方角では「東」、色は「青」(古墳などでよく見られる四神でも東の守り神は「青」龍です)、「木」の性質があり、木の枝や根が伸びやかに成長するという季節でもあります。

 体に関しては、五臓六腑の中では「肝」の季節で、漢方理論では「肝」は自律神経系や目、筋膜とのつながりが深いので、イライラや目の症状が顕在化しやすい季節でもあります。また「肝」の支配している筋膜というのは、手足の筋肉だけでなく、胃の蠕動運動も血管の収縮などにも関連していますので、胃腸の動きがぎくしゃくしてゲップやガスが出やすい、血圧が上昇するなどのほか、腰や背中の筋肉も硬くなりやすくなって、腰痛やぎっくり腰も発生しやすくなります。

 日本でも「ストレスは胃に来る」というような言い方をしますが、漢方理論ではストレスの中でも「自分の思い通りにならなくてイライラする」というタイプのストレスは「肝」に影響し、「肝」の支配する筋膜が筒状になったと考えられている消化管のなめらかな蠕動運動がギクシャクしたりする事で胸やけや胃の痛みなどが発生すると考えます。また「今さらどうしようもないことをいつまでもあれやこれや考える」というタイプのストレスは、直接、胃腸の働きを低下させる方向に影響を与えます。

 女性の方では、生理前になると胸や脇がはるというのは、「肝」に負担がかかっている兆候ですが、漢方薬の良いところは、「肝」のコンディションを整えるという働きのある処方を服用することで、「肝」に関連する様々な症状(例えば、生理前の胸の張り、ゲップやガス、痙攣性の便秘、イライラなどの神経症状などなど)が同時に良くなっていくと言うことです。(もともと「肝」に関する症状などをおもちの方は、春の季節になると、上記の様々な症状がより顕在化しやすくなります。)

 いずれにせよ、草木の新芽や根が伸びやかに成長する季節である春の養生法として大事なのは、「気」がスムーズに流れるようにするということで、暖かい日には公園を散歩したり、食事では香味野菜や柑橘類、ミントなど気の流れを発散させる働きのある食材を取り入れることなどをお勧めします。

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