わかりやすい漢方講座(その29)~汗の異常
漢方では、汗に限らず尿や便通、女性の生理の状態などを重要視します。現代のように検査機器の無い時代、これらのものは体の中の状態を知る上で大きな手がかりとなったからです。
現代の西洋医学的な診断または検査では汗の状態などはあまり重視されませんが、漢方の世界では、何千年にも渡って汗の状態を観察してきた歴史があり、病気の状態や体質を知る上で汗は重要な手がかりとなります。
さて、汗に関して、日常生活で問題になるのは
1.暑く感じるわけでもないのに、また、ちょっと動いただけでも汗がでる
2.昼間は殆ど汗をかかないけれど、寝ている間によく汗をかく
3.緊張すると、掌(てのひら)などが汗ばんでしょうがない
などですが、この他にも
4.左半身または右半身のみに汗が出る
5.頭や顔だけによく汗をかく
6.胸のあたりだけに汗をかく
7.脇のあたりだけに汗をかく
なども、たとえそのような汗をかくことが主訴でなくても、体質や他の疾患の病態や原因を把握する上では重要な手がかりとなります。
また、体が熱っぽく感じるのに汗が出ないなど、出るべき時に汗が出ないのも漢方診断上、意味の有ることとして捉えられています。
その他にも、かぜを引いたときに、熱っぽくて汗が出ない時と、反対に冷や汗のような汗が出ている時では用いられる処方も違ってきます。
特に現代社会は、空調設備が整っていることから、屋内と屋外の温度差が大きく、そういったことも人間の持つ体温調節機能に影響し、更に自律神経などにも影響を与える結果、汗の異常が生じやすくなっていることも事実です。
また、汗が異常に出ることがストレスとなって、この事が更に自律神経に影響することもあります。いずれにしても、汗のことで何か気になることが有れば漢方の出番です。