年寄りの冷や水

わかりやすい漢方講座(17)~「年寄りの冷や水」

 よく使われる諺というか慣用句に「年寄りの冷や水」というのがあります。意味としては、「歳を考えずに無茶なことをするのはよくない」ということですが、もともとは「冷や水」をどうすることが「無茶」だと言っているのかについては諸説あります。

 アンケートをとれば、おそらく歳を取ってから「冷たい水をかぶること」は体に良くないというのが一番多いと思いますが、江戸時代のカルタの挿絵には、お年寄りが水を飲んでいる様子が描かれています。

 即ち、本来の意味は「年寄りが冷たい水を飲むのは、無茶なことである」という意味で、漢方理論と合致しています。というより、当時はそれが身体にとって良くないと言うのは医学のレベルではなくて常識のレベルであった筈です。

 そもそも、日本は湿気が多く、湿気は胃腸機能を低下させます。胃腸の機能が悪いと、食べ物が「血」や「精」という物質に変換されないだけでなく、胃腸から発生する「気」のエネルギーも低下してしまいます。このため、おなかを冷やすと言うことは、生命の維持に支障をきたしかねないほどの重大事であったわけです。よって、日本の伝統的な健康法の根幹は「おなかを冷やさないこと」でしたし、昔から高貴薬の代表として珍重されていた薬用人参の薬効とは、「胃腸の機能を高めること」です。

 反対に言えば、胃腸を冷やす事から「気」「血」「精」の不足が引き起こされ、様々な病気につながっていくわけですが、若いうちはまだしも、歳をとればとるほど人間の持っている熱エネルギーは低下していきますので、年寄りは特に冷たい水を飲む事を控えるべきだということになります。

 ただし、昔のことですから「冷や水」といっても、常温の水のことですから、現代のように冷蔵庫から出したての水やお茶、ジュースなどよりは温かい筈で、それでも体に良くないという事ですから、現代人がいかに冷たいものを摂りすぎているかという事になります。

 いくら冷たいものを摂っていても健康そのものというのなら良いですが、普通は
・胃の調子が良くない
・風邪を引きやすい
・花粉症である
・貧血気味である
などの症状から始まり、様々な疾患へとつながっていきますので、思い当たる方は、できるだけ冷たいものを飲まないようにして下さい。

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