わかりやすい漢方講座(その2)~「未病」とは
漢方医学に於いて「病気」とはなにかというと、大局的には人体の「陰」と「陽」のバランスが崩れた状態(陰陽失調)が病気であり、治療とは漢方薬や針灸治療によって「陰」と「陽」のバランスを整えることとなります。そして「陰」と「陽」のバランスが整うことで、自己治癒力が最大限発揮される状態となって病が治るわけです。
また、病気になってしまうほど「陰」と「陽」のバランスが乱れていなくても、その前兆を捉え、食事をはじめ様々な養生法を通じて病気になるのを未然に防ぐことが最も重要であるという考え方が根本にあって、「最も優れた医者は既に病気になってしまった患者を治すのではなく、病気になりかかっている状態(漢方の言葉で「未病」といいます)の人を治す」と言われています。更に、この未病と呼ばれる状態にならないためにも日常の飲食が最も重要であるとして、「医食同源」という考え方も生まれてきた訳です。実際に、中国では既に紀元前の西周の時代には、宮廷に仕える医師を4つに分類し、その中で最高位に位置づけられていたのが食医と呼ばれる皇帝の飲食を管理する医師でした。(因みに、あと3つは疾医(内科医)、瘍医(外科医)、獣医)
この未病という状態を重要視することから、漢方では自覚症状や顔色、舌の状態、便や尿の状態などを事細かに鑑別するノウハウが積み上げられてきました。西洋医学では、ともすれば検査至上主義に陥り、不快な自覚症状があっても検査データで異常が見つからなければ、「気のせい」の一言で片づけられてしまう事がありますが、漢方に於いては、このような場合未病と捉え、大まじめでその自覚症状の発生原因を考え、適切な養生なり漢方処方を用いて自覚症状の解消を目指します。