戦後まもなく湯島聖堂に書籍文物流通界料理部というのができ、中国の古文献をもとに伝統的な中国料理を再現するなどの活動が行われていました。
この、見た目は限りなくシンプルな杏仁豆腐は、そのレシピを元に再現されたものです。
杏仁豆腐の杏仁(きょうにん)とは、アーモンドのような形をしたアンズの種で、独特の芳香があります。
生薬としても用いられ、咳止めや乾燥性の便秘に有効とされ、五臓六腑の肺や大腸を潤す作用があります。もともと中国北部の乾燥地帯の植物で、北方の遊牧民が杏仁を汁粉にしていたものを、杏仁豆腐としてアレンジしてできたとされています。
ただし、本来の生薬としても使われる北方の杏仁は香りも強いものの渋みがあり、現在では食用には中国南部で栽培される香りも薄いものの渋みがない南杏(ナンシン)が一般的には使われています(日本では残念ながら合成の香料を使ったものが多いような気がします)。