富山大和漢医薬総合研究所の研究グループによると、このたび動物実験で、ヤマノイモやナガイモに豊富に含まれるジオスゲニンという成分にアルツハイマー病における認知機能改善効果が認められたとのこと。具体的には、アルツハイマー病で変成してしまった脳内の神経軸索を回復させ、記憶障害を顕著に改善させる効果が認められたとのことで、今後の新薬の開発への期待が高まっているようです。
もともとヤマノイモやナガイモなどは滋養作用のある食べ物として知られていますが、これらを乾燥させたものは山薬と称し、漢方の要薬として脾(胃腸)をはじめ、肺や腎を補う作用があるとされてきました。
具体的な処方としては、老化予防の標準的な処方である六味丸や八味丸などのほか、胃腸そのものの栄養失調状態によって飲食物の栄養吸収に支障をきたしているような状態を改善する参苓白朮散などに配合されています。
さて、漢方では“脳は髄の海”とされ、また髄は精という物質から作り出されることになっています。精とは生命の根源物質のようなもので、成長、発育、生殖、老化に深く関与しており、両親から先天的に受け継いだ精(先天の精)をもとに生命が誕生し、健康で長生きするためには、脾(胃腸)の働きによって飲食物の中から最も栄養の濃い部分を後天の精として補充していく必要があるとされています。
つまり、アルツハイマー病のように脳がスカスカになっていくのは、髄の不足からであり、髄の不足は即ち精の不足と言うことになります。今回の研究成果からは、山薬に含まれる成分に脳内の改善機能が認められたことから、漢方的に解釈すると山薬には精という物質が含まれていることになります。正に“精のつく”食べ物だということです。
漢方理論では、精は主に五臓のなかの腎におさめられていますので、腎を補う作用があるとされている山薬が精を補充し、脳機能の改善につながることに意外性はないのですが、漢方薬の中で精を補充するとされる生薬は鹿茸をはじめ他にもたくさんあります。
今後、それらの生薬からアルツハイマー病を改善させる効果のある物質が発見されることも予想されますが、中年以降は日頃から精を補充することを心がけることがアルツハイマー病を発症しにくくなるのは間違いありません。