冬の養生のポイント

 冬は気温と湿度が低下しますが、このことが人体にどう影響するかについて当たり前のことを書いておきます。

◎当たり前のこと(その1)・・・人間は恒温動物です

 夏の暑い時期であろうが冬の寒い時期であろうが、人間は体温を36度程度に維持する必要があります。単純に考えても、気温が30度の時に比べて10度の時の方が体温を維持するためにより多くの熱エネルギーを必要とします。

 漢方では体温を維持しているのは“気”のエネルギー(専門的には衛気(えき)と呼ばれる“気”)で、“気”はそのほかにも、人体の機能、特に免疫や血流にも深く関与していることから、からだが冷えれば冷えるほど体温維持のためにエネルギーが回され、免疫力や血の流れに影響が及びかねません。

 暖房や厚着をすることでからだの機能面の低下は防ぐことができますが、“気”の主な発生源である胃腸を冷やすと“気”のエネルギーが低下して、体調を崩しやすくなります。冷たいものはからだに悪いから常温のお茶や水を飲んでいる方もおられますが、胃腸の中の温度は37度以上はありますので、常温でもからだを冷やすことに違いはありません(エネルギーが余っていて、コップ1杯の常温の水を頭からかぶってもかぜを引かない自信があれば別ですが・・・)。

 要するに、冬の養生法の第一は、いかにからだを冷やさないかであって、朝晩の寒いときにはできるだけ外出を避け、温かくて栄養のあるものを摂ることが基本となります(これを実践すると確実に太りますが、からだを動かすのは、暖かい春になってからというのが漢方養生法の基本です)。

◎当たり前のこと(その2)・・・呼吸は鼻でするもの

 動物で口から空気を吸えるのは人間だけだそうですが、近年、無意識のうちに鼻ではなく口で呼吸をしている人が増えているそうです。

 鼻で吸おうが、口で吸おうが空気に違いはないのですが、鼻で空気を吸うと、気管にたどりつくまでに、鼻腔内の繊毛などにより細菌やウイルスを除去するとともに、空気が加湿、加温されやすくなります。

 誰も意識していませんが、吸った空気は、肺にたどりつく時点で温度が37度、湿度100%になっている必要があり、冬になって空気の温度、湿度が低くなればなるほど、この加湿と加温により多くのエネルギーが必要となります。更に、鼻で吸うと鼻腔などを通過する際に加湿、加温がされやすく、口からダイレクトに空気を吸うと肺に到達するまでに上気道における加湿、加温の為のエネルギーがより多く必要となります。

 この時に、上気道の空気を加湿、加温するための能力が追いつかなくなると緊急事態として、上気道に炎症が発生するとともに粘液の分泌が亢進してしまいます。この状態が急性上気道炎で、簡単にいうと“かぜ”を引いてしまうわけです。

 もちろん吸った空気を加温するのも“気”のエネルギーによるわけですので、からだを冷やさないことも重要ですが、かぜを引かないためには口で息をするのではなく、鼻で空気を吸うことが重要となります(口呼吸はかぜを引きやすくなるだけでなく、様々な疾患の遠因ともなるばかりか、美容面にも悪影響を及ぼします)。

 

 

 

 

 

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