紹興酒に漬け込んだ鯉の身を煎り焼きにした前菜です。
中国の伝説では、鯉は竜門の滝を登って龍になるとされ(登龍門の語源)、昔から宴席料理にも好んで使われてきました。日本でも相当古くから食用とされてきましたが、近年、関西ではあまり見かけなくなりました。
淡水魚専門の魚屋さんの話しでも、鯉を求められる方は殆どが食用と言うより“薬用”だそうで、腹水に小豆と共に煮るとか、産後の母乳の出を良くするためにという理由で買いに来られるとのこと。
実際に、薬膳的な効能としても利水消腫や母乳の出を良くする作用があるとされ、その他には胃腸を元気にするとされています。また、鯉のきも(鯉胆:りたん)は目に良いとされています。
ところで、母乳は血液から作られますので貧血気味の方はどうしても母乳の出が悪くなります。また、貧血=鉄分の不足と思いこんでおられる方は多いですが、実際は鉄分だけでなく、亜鉛を始め様々なミネラルやビタミン類なども関係しています。また、食事の内容自体も問題ですが、胃腸の機能が低下した状態が続くと、いくら栄養のあるものを食べてもからだに吸収されないため、結果的に栄養不足となり貧血や母乳の出が悪くなります。
現代は、ビタミンやミネラルなど様々なサプリメントが売られていますが、そういった栄養素の不足を自覚されている方は、漢方的にみて胃腸機能がきちんと働いているかどうかチェックされることをお勧めいたします(※)。もし、胃腸機能が低下しているようなら、サプリメントを摂る前に漢方薬などで胃腸機能を調えることを優先すべきだと思います。
(※)漢方では、胃腸機能がきちんと働いているかどうかは、次の3つの事を聞くだけでわかります。即ち、(1)毎食、おなかがすいたーという健康的な空腹感がない (2)食後に胃の膨満感やもたれを感じる、あるいは眠たくなる (3)軟便がち、あるいは普段は便秘気味でもどうかすると下痢する の3つのうち2つ以上当てはまれば、脾虚=胃腸機能低下状態とされています。