食事でかかる 新型栄養失調

Photo  本の帯には「医者も栄養士も知らない“食生活の落とし穴” 発達障害、うつ病、高血圧、腰痛、ひざ痛、認知症・・・etcが次々と改善!」とセンセーショナルに記されていますが、食品の安全を守る活動を展開し、近年は食品中のミネラル不足について警鐘を鳴らされているNPO法人「食品と暮らしの安全基準」代表の小若順一氏の新刊です(同NPO法人の元職員でもある国光美佳さんとの共著)。

 第1章では「初実測!人気食品のミネラル量」としてセブンイレブン、ローソンなどのコンビニ弁当から、冷凍食品、外食のメニューから厚生労働省職員食堂の定食まで、総て実名と写真入りで紹介され、殆どのメニューで5大ミネラルとされるカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅が不足している実態がデータとして挙げられています。

 第2章以下では、ミネラル不足の原因として“異常な「進化」を続ける食品の精製”(第2章副題より)や飲料に多用される“純水”の問題など具体的な事例を挙げ、カロリーは足りていてもミネラル不足の食事を続けていると様々な病気や障害の原因となることが示されると共に、ミネラル不足を補うように食事を変えることで、みるみる体調が回復していくことが実例を挙げて紹介されています。

((株)三五館、2010年12月24日 初版発行)

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 世の中には世界中の食材や様々な加工食品があふれていますが、野菜なんかでも見た目は同じでも昔に比べて味が落ちているだけでなく、ビタミン、ミネラルなどの栄養素は、戦後低下の一途を辿っています。外食や加工食品にいたっては安全性の追求から何度も“洗浄”を繰り返すうちに中に含まれる栄養素は溶け出していきます。更には、リン酸塩などの添加物は食品中のミネラルの吸収を阻害しますし、保存料という名の細菌の繁殖を防ぐ物質は腸内細菌バランスにも悪影響を与えかねません。

 更には、農薬やポストハーベスト、遺伝子組み換え作物の問題など、近年、食に関する“警告”があとをたちません。このような状況の中で、平成22年版の食育白書によると、「健康を維持するための1食の量とバランスがわかるか」との問いに対して、全世代の男女で26%が、20代30代男性に限れば40%近くが「わからない」と回答しており、なにがしかの不安をかかえながらもファーストフードやコンビニ弁当、加工食品を多用している人が増え続けていると思われます。

 その結果、体調がおかしくなったり、うつ傾向になったり、病院の検査で異常はみつからないけど様々な不定愁訴に悩まされ、薬をのんでも一向に改善しないという人が増えてきており、その総てが本書に記されているようなミネラル不足が原因とは言えないまでも、“食”に問題の根幹があると思います。

 漢方の世界でも昔から「養生七分、治三分」とされ、養生の多くは食養生であり、治療薬などは進歩し続けているかも知れませんが、養生(食養生)の部分がメチャクチャでは治る病気も治らないのは間違いありません。

 

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