毎年、12月になるとお屠蘇をお配りしておりますが、数年前から目立って言われることは「お屠蘇って何?」です。
それも、10年くらい前は、20代からせいぜい30代半ばくらいだったように思いますが、ここ数年は40代の方でもお屠蘇を知らない方が増えてきているように思います(色々調べてみると正月に屠蘇をいただく習慣は、西日本で色濃く残っている習慣のようで、東日本の方では関西ほど馴染みがないそうです~そのうちケンミンショーで取りあげられるかも知れません)。
もともとは、三国時代の名医、華佗の考案による処方~屠蘇散がはじまりとも言われていますが、日本には平安時代に唐より伝えられたとされ、宮中での正月の儀式として始まりました。
芳香性に富んだ生薬が数種類入っており、お酒に漬け込んだものを正月三が日に飲み、その年の健康を願うもので、日本酒に味醂を加えて甘くした方が飲みやすいです(イメージとしては養命酒のような味になります)。
お屠蘇にかぎらず、香りの強いものには邪気を払う作用があると考えられており、運動会でお馴染みの“くす玉”も、元々は、周囲から邪気が侵入してこないように香りの強い生薬などを中に入れ軒先につるしたもので、漢字で書くと文字通り“薬玉”になります。
お屠蘇や薬玉のように、香りのパワーで邪気を遠ざけるという考え方は、現代でいう抗菌作用とかではなく、良い香りで人体の“気”の流れを良くして、ストレスによる“気詰まり(漢方では気鬱とか気滞と言います)”をほぐすことで健康を維持すると考えられ、今風に言えばアロマテラピーとも言えます。
(参考)~約2000年前の医学書である黄帝内経には「百病は気より生ずる」と記されており、健康の基本は“気”がスムーズに流れることであり、ストレスなどで“気”の流れが滞ることが病気の第一歩とされています。これを平たく言うと「病は気から」になるわけですが、現代では「病は気から」というと精神論的な使われ方をされることが多く、原典の意味からは乖離してしまっています。