葬られた「第二のマクガバン報告」

Photo_2  本書は米コーネル大学栄養生化学部名誉教授であるキャンベル博士が、これまで関わった様々な栄養調査や、陣頭指揮を執った中国に於ける大規模な栄養と健康に関しての疫学調査(チャイナプロジェクト)などをもとに下した食と健康に関わる“衝撃の結論”についてわかりやすく述べられた本です。

 本の帯には“全米の医学界・栄養学会・製薬業界を震撼させた歓迎されざるベストセラー”とあるように、その内容はこれまでの栄養学の常識をくつがえすもので、ニューヨークタイムスが「疫学研究のグランプリ」と絶賛したそうです。

 本書によって“覆された「常識」”とは、

・「ガンの進行は止められない」という常識

・「動物タンパクでなければ大きくなれない」という常識

・「カゼイン(牛乳タンパク)で健康になれる」という常識

・「コレステロール値の低い人には肉をすすめる」という常識

・「良質=体に良い」という常識

などなどですが、大規模な疫学調査で科学的にデータを分析した結果だけに、これまでそういった“常識”を喧伝してきた側から見れば“歓迎されざる”本だと思いますし、大手のマスコミも食品メーカーなどの大スポンサーの手前、取りあげることができない内容であるのは想像に難くありません。

(T.コリン・キャンベル、トーマス.M.キャンベル 著、松田麻美子 訳、グスコー出版、2009年12月)

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 明治になって欧米の栄養学なるものが導入され、それによって組み立てられた欧米的な食事内容は日本人の体に合わないと強く訴えてきた石塚左玄ほか多くの先達の主張の正しさが、図らずもアメリカの権威ある栄養学者の調査によって裏づけられたという感があります。

 更に、欧米人にとってすら牛乳や動物性タンパク質は健康にとってマイナスであるという結論や、同じタンパク質といっても動物性タンパク質と植物性タンパク質では体内に於ける代謝が異なり、前者は皮下脂肪となって貯えられやすく、後者は体温を上昇させることで消費される傾向が強いというのは、最近の日本人の低体温の原因にもつながるのではないかと思いました。

 また、こういった本や情報がマスコミによって取りあげられることがなく“葬りさられる”傾向にあるのは、アメリカも日本も同じだと思いますが、情報社会と呼ばれる中にあって、本当に必要な情報を得ることはかえって難しくなってきているような気がします。

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