先週は、地元の区の小学校の保健担当教員の研修会と、市内の別の区の学校保健大会に招かれて、「漢方から見た子どもの健康」というテーマでお話しをさせて頂きました。
特に、地元の区では今年のテーマとして子どもの低体温の実態調査と生活習慣の改善に取り組んでおられましたが、現在の日本の子ども達の間では、低体温に限らず、かつてないほどアレルギー疾患が蔓延するとともに、ちょっとしたことで骨にヒビが入ったり、筋肉の発達に問題があるといった事が問題になっています。
では、どうすればいいのかというと「早寝早起き」や「バランスの良い食事」「朝食を摂りましょう」といった生活習慣の改善に取り組んでいるとのことでしたが、いくつかの提案をさせて頂きました。
まず一番問題になるのは、「冷たいもの」の摂りすぎであって、それを止めるだけでも相当な効果があるとお話しさせて頂きました。(漢方的正しい食養生(その2) 参照)
冷たいものの摂りすぎは、胃腸を冷やして機能低下を招き、食欲がない、食べたら眠たくなるなどのほか、気力低下や貧血にもつながります。つまり、いくらバランスの良い食事といっても食品を受け入れる胃腸が働かない状態では意味がないということです(くどいですが、その胃腸機能低下の最大の原因が冷たいものの摂りすぎです)。朝ご飯を食べないことが問題ではなく、朝ご飯を食べたくないことの方が問題であって、そういった子に無理矢理食べさせても問題は解決しないと言うことです。
また、西洋医学的に見ても、胃腸にある消化酵素は20度以下では殆ど働かなくなるということや、1999年に循環器病センターの研究で、胃からは、食欲増進作用と成長ホルモンの分泌を強く促す作用があるグレリンというホルモンが分泌されていることが発見され、漢方の胃腸機能がしっかりしていないと成長に支障をきたすという考え方の妥当性を示唆するものとして紹介しました。
成長ホルモンということでは、深い睡眠(ノンレム睡眠)の時に分泌され、しかも時間帯としては夜の11時から午前1時頃に一番よく分泌されることがわかっていますので、早寝早起きには賛成ですが、就寝前におやつや夜食を食べること、神経が興奮するテレビゲームなどを寝る前にすることは、深い眠りにはいるのを邪魔するので避けるようにともアドバイスしました。
学校関係者やPTA関係の方にこういった話しをしていて特に感じるのは、50代以上の方なら、「おなかを冷やすのはからだに良くない」という話しがすんなり理解して貰えるのですが、40才以下の人にはもう一つぴんと来ないようで、それだけ日本中が冷たいもの漬けになっているような気がします。
また「冷たいもの」はからだに良くないということを理解して貰えても、「冷たいもの」のイメージがアイスクリームや冷蔵庫から出したての飲み物、氷の入ったものというイメージで捉えられています。冷蔵庫など存在しない大昔から言われ続けている食における「冷たいもの」とは、「冷(さ)めたもの」という意味であって、体温より低い温度のものを指すわけですが、これも電気ジャーの普及で「冷や飯(ひやめし)」なるものにお目にかかることが無くなった現代ならではの現象だと思います。