体温力

Photo   東洋医学にも詳しく、伊豆で「ヒポクラティック・サナトリウム」を開設し、断食道場を主宰する石原結實医師の本です。最近ブームのショウガ紅茶の火付け役となった先生といった方がわかりやすいかも知れませんが、前々から現代人の日常生活に潜む問題点を漢方的にわかりやすく解説されています。

 内容紹介には「なぜ現代人は低体温になってしまったのか?「塩分は健康のために控える」「水分は不足しないようたくさん摂る」「発熱したら薬で体温を下げる。」これらの誤った常識にとらわれていたからだ。しかし、実は、低体温こそが万病の原因となるのだ。体温が平熱より1度上昇すると、免疫力は5~6倍になるという。冷え症、緑内障、アレルギー、うつ等の症状も、「体を温める」生活習慣で改善する!

 漢方薬と食事療法によるユニークな医療で知られる著者が、最新の研究データ、症例を紹介。」とあります。

(石原結實、「体温力」、2008年10月、PHP研究所 発行)

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 本書でも、日本人の体温が低下傾向にある理由をいくつか挙げておられますが、漢方的に見た場合、最も問題になるのが「生冷過食」と呼ばれる冷たいものの摂りすぎです。現代人にとっては当たり前の冷蔵庫も、人類の長い歴史から見るとほんの数十年前に登場したもので、これにより手軽に冷たいものが手にはいるとともに、食品の栄養分析のみに明け暮れる現代栄養学至上主義のもと、食品の温度が問題にされることもなく、昔ながらの食養生やおなかを冷やすのはからだに悪いという概念が消失したことなどで、おなかが冷え切っていることが低体温の大きな理由だと思います。

 専門的に言うと、胃腸は陰陽という概念で言えば「陽」である「気」の主な発生源であり、おなかを冷やすと文字通り気力が低下(現代医学的に言えば免疫力が低下)するとともに、胃腸の消化酵素の活性も低下して、いくら栄養のある食べものを摂っても、消化と吸収に支障をきたし貧血の原因となるばかりか、生命の種火とも言える「命門の火」の燃料である「精」という物質の不足から、根本的な熱エネルギー不足状態になっていきます。

 また、問題はそれだけにとどまらず、胃腸は水分代謝に大きく影響しているために、むくみやすくなるほか、軟便やおりものの増加など「不要」な水分が増える反面、むくみが原因で「血」の栄養が皮膚に行きわたらなくなるために、皮膚は乾燥したりシミが増える原因ともなります。

 特に大人より体温が高いはずの小中学生の間で平熱が36度に満たない子ども達が増加していることが、教育現場でも問題になっていますが、成長過程の子どもの時点で体温が低いと、骨や筋肉の発達に支障が出るだけでなく、アレルギー疾患の増加などにもつながっていきます。

 こういった現状に対しては、睡眠不足や食の問題が取りざたされているものの、ちょっと前の日本人なら誰でも知っていた「おなかを冷やしてはいけない」という大原則を見つめ直すことこそ急務なのですが・・・

 

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