東北大学の教授である著者が長年のIBS(過敏性腸症候群)の研究から知り得た脳と腸の複雑な関係(相互関連)についての本です。
過敏性腸症候群は男性では下痢型が多く、女性では便秘型が多いものの、単純にストレスが脳から腸に影響して発症すると言うよりは、患者の腸自体の感受性が高いことが実験で確かめられており、更に腸の状態が脳の情動形成にストレートに影響することも明らかになったことなどが具体的に解説されています。
特に興味深かったのは、感覚に関する脳内処理の中でサブリミナルなものに関しては情動との関連が深く、腸の状態や癌などの発生による体内の状態の変動が、例え意識レベルまでの強さがなくても、情動にも影響しうるという部分です。
漢方では、脳はあくまでも目、耳、口などがうまく機能するようにコントロールしているところであって、人間の心に関してはお腹の中の内臓が深く関与していると考えられています。この本に書かれていることも、角度は違いますが、以前にご紹介した「内臓が生み出す心」や「腸は考える」、「セカンドブレイン」などの内容とも符合する部分が多く、科学の進歩が漢方の考え方の正しさを証明する方向に進んでいるような気がします。