免疫がちゃんと働くと病気にならない。その為には自律神経のバランスが最も重要であるという「免疫革命」の著者である新潟大学の安保徹教授監修の食事からみた免疫力アップの実践的な解説書です。
免疫力が正常に働くためには交感神経と副交感神経が適度なバランスをとることが重要で、過労やストレスにより交感神経が優位になると顆粒球が増加し、リラックスしすぎて副交感神経が優位になるとリンパ球が増加するが、どちらか一方に片寄った状態が続くことで免疫の異常が生じるというのが安保理論のベースです。特に、ストレスが充満している現代社会では交感神経が優位になりすぎて多くの疾患の原因になっています(リラックスしすぎても良くないと言うのは漢方理論でも同じで、漢方の考え方では致病因子の中に過労や飲食の不摂生などとともに「安逸過多」というのが含まれています)。
また、日常生活で免疫力を上げる為には、適度な運動や呼吸法、ぬるめのお湯にゆっくりつかることなども重要ですが中でも食事の影響が大きいとし、免疫力を高めるためには次の8つのポイントを挙げています。
1.「丸ごと食品」を食べる
できるだけ玄米、大豆、ゴマ、小魚、小エビなど、精白したり加工していないものを「丸ごと」食べる
2.発酵食品を食べる
味噌、醤油、納豆、漬物など発酵食品を毎日食べる
3.食物繊維をたっぷりとる
食物繊維の多い食材は噛みごたえがあり、よく噛むことで唾液の分泌も増えるし、食物繊維は整腸作用とともに農薬などの有害物質の排泄作用も期待できる
4.「いやいや食品」をとる
お酢や梅干しなどのすっぱいものや、しそ、しょうが、にんにくなど刺激のあるものを適量とることで胃腸が活発に動く
5.体温を上げる食事をとる
体温が下がると免疫力も低下するので、体をあたためる作用のある食材を積極的に摂るとともに、体を冷やす冷たいものは極力避ける
6.適量の水分をとる
水分のとりすぎは消化液を薄めるのでよくありませんが、食事以外にも「適度」な水分補給は必要
7.年齢に応じて食を選ぶ
活動量の多い若い人やスポーツマンには玄米よりも白米の方がパワーがでやすいなど、その人に応じた食事を選ぶ
8.神経質にならず、楽しく食べる
必要以上に食事に神経質にならず、また楽しく食べることをこころがける
本書には、以上の8つのポイントをもとに様々な食材や献立が豊富なカラー写真とともに掲載されていますが、無味乾燥な病人食ではなく、かといってグルメ本でもないですが、それなりに食欲がそそられます。
監修者の安保教授は、自律神経のバランスと免疫という切り口から食事について述べておられますが、結局のところは伝統的な日本食を中心に食べると言うことだと思います。
(監修:安保徹、料理:検見崎聡美、「安保徹の食べる免疫力」、世界文化社、2005年)